県内市町教委との懇談結果 (2006年10月)


教育基本法「改正」に反対するアピール

  第164通常国会に提出された2つの教育基本法「改正」案は、国会審議の結果、その取り扱いは、今臨時国会への継続審議となりました。
  「ライブドア事件の原因は規制緩和と言われるが、教育が悪いからだ。教育は大事で、教育基本法改正案も出したい」と2月に発言した安倍晋三氏(『毎日』2/17付)。そんな安倍氏が総理大臣になり、憲法と教育基本法の「改正」を優先して取り組む姿勢を表明しています。
  私たちは憲法と教育基本法の改悪に反対します。
自由民主党は「新憲法草案」を昨年11月に発表しましたが、この憲法「改正」で目指していることは、現行平和憲法が禁じている、海外での武力行使に道を開くものにほかなりません。また、この憲法「改正」の前段として「戦争のできる人づくり」を行なうことが教育基本法「改正」の目的であり、このことを強く志向しているのが安倍晋三氏です。アメリカとともに日本が戦争のできる国になることを私たちは認めることはできません。
先の国会審議を通じて、「改正」案によって今の教育基本法が排除している政府による教育への介入が、今以上に行われる危険性が明らかにされました。そして何より問題なのは、どうしていま教育基本法を「改正」する必要があるのかを、政府・文部科学省は説明できないでいることです。
  「改正」反対や慎重審議を求める声も広まっています。弁護士会や教育学者はもとより、公立小中学校の校長のその約3分の2が、「改正」案に反対しています(東京大学基礎学力開発研究センターが行った調査)。法案の中身が明らかになればなるほど、この声はさらに広まっていくと思います。また東京都教育委員会による国旗、国歌の強制を憲法や教育基本法に違反するとした東京地裁判決は、「愛国心」教育に警鐘を鳴らすとともに、法案のもつ問題点を司法の面から改めて浮き彫りにしたものといえましょう。「愛国心」評価の「通知票」の是正がはじめられたことも合わせて考えれば、「改正」案によって進められる教育はすでに破綻しているともいえるのではないでしょうか。その上、今日問題になっているさまざまな「格差」を放置し、今以上に競争的な教育がすすめられるなら、憲法26条が保障している「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」も否定することになります。
  私たちは、このような法案の危険な中身をもっと広く知らせていきたいと思います。そして教育基本法「改正」案を何としても廃案に追い込むために全力を傾ける決意です。県民のみなさん、教育基本法を守り、子どもたちのための教育を今以上に進めるために、ともに力を合わせましょう。

2006年10月

                         宇都宮大学職員組合執行委員長  内野 康人之
                         作新学院大学教職員組合執行委員長 片岡  豊
                         全栃木教職員組合執行委員長 小久保 富治
                         栃木県私立学校教職員組合連合執行委員長 飯田  進
                         栃木県労働組合総連合議長 阿波 長次




2006年5月22日付

PTA会長 宛

   憲法・教育基本法を守り、生かすことについての要請書

 子どもたちの福祉や健全育成のためにご尽力されていることに敬意を表します。
 私たちは県内の公立学校で勤務する教職員で組織している教職員組合です。多くのPTAからご協力をいただいた「ゆきとどいた教育をすすめる全国3000万署名」ですが、県議会宛署名は4114筆、国会宛署名は3859筆を集約しました。県議会宛署名は3月議会で残念ながら不採択という結果になりました。ご協力ありがとうございました。
 すでにご承知のことと思いますが、政府・与党は4月28日に教育基本法案を国会に提出しました。教育基本法は憲法と一体のものとして1947年に制定され、日本の教育を規定してきたものです。果たして今変える必要があるのでしょうか。
教育基本法は、前文で「憲法の理想は根本において教育の力にまつべきもの」とし、憲法26条で定めている「ひとしく、能力に応た教育を受ける権利」を保障し、教育行政の目的を条件整備であることを明記しました。この教育基本法の精神を取り入れたフィンランドが「学力世界一」となったことは記憶に新しいことと思います。
 ところで、日本でこの教育基本法は生かされてきたと言えるでしょうか。教育基本法は教育委員会制度を発足させましたが、当初教育委員は公選制でした。その公選制は1956年に廃止されましたが、その国会審議には警察官が導入され、採決が強行されました。その後任命制となった教育委員会のもと、中央集権的な教育は強まりました。さまざまな教育問題が起こっても、国民が直接意見を反映させる場を持っこと
ができなかったのです。
 日本の教育については、国際連合の子どもの権利委員会から「教育制度の過度に競争的な性格が子どもの肉体的および精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、かつ、子どもが最大限可能に発達することを妨げていること」、「高等教育への進学が過度に競
争的であるため、公立学校の教育が、貧しい家庭の子どもには手の届かない家庭教師や塾の学習によって、補われなければならないこと」と勧告されています(2004年1月子どもの権利委員会第2回「勧告」)まさに今問題になっている「格差」が、世界的にも指摘されているのです。
法案では、義務教育の年限が削除されました。このことは、小学校段階からの競争をさらに加速化させ、6・3・3・4の単線型から、戦前の複線型のように「飛び級」も可能にするものと言わざるを得ないのです。
 憲法は戦争放棄、平和主義をその原則にしています。我が国の防衛を第一の任務として創設された自衛隊も、国連のPKO活動に始まって、アメリカ軍が起こしたイラク戦争にも、「人道復興支援」という名目で、武器を携帯して派遣されています。憲法9条を自民党は改定しようとしていますが、教育基本法で「国と郷土を愛する」ことを目標にすれば、「アメリカと一緒に戦争のできる国」にし、「戦争する国のひとづくり」を行うことになりかねません。教育基本法「改正」の目的は、西村真悟衆議院議員が発言した「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人をつくること」にあるのです。さらに、男女共学の規定が削除されたり、家庭教育や子ども自身の学習態度についても法律で決めようとしています。
 これほど大きな変更にもかかわらず、与党は法案の作成を密室で行い、その国会審議は実質1か月間で終わらせようとしています。日本の教育制度の根本を、こんな短時間で、時の政権の考えで決めてしまうことは断じて認めることはできません。また、
教育基本法案を審議する特別委員会には、この法案に賛成する元文部(科学)大臣が名を連ねています。この構成を見ると、これまでの多くの文部(科学)大臣は、現行教育基本法を具体化する行政「憲法と教育基本法の改悪に反対し、憲法9条を守り、教育基本法を生かすことを
求める」署名用紙を同封しました。ご賛同くださる方は、ご署名の上、同封の封筒を使用して返送してください。連名の署名用紙も同封しています。お知り合いの方に広げてくだされば幸いに存じます。
 なお、この取り組みについて、私たちの組合のHPで報じる場合もありますのでご承知おきください。報じる場合は署名数のみとするつもりでいます。国会に提出する以外に署名を使用しないことをお約束します。趣旨をご理解の上、ご協力くださいま
すよう、重ねて申し上げます。
以上

裏面に現行教育基本法と教育基本法案を載せています。


民主的な教育へもどる